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執筆者の写真世話人

連載:心理療法に活かすSCT 第1回

更新日:6月1日

 先日集団精神療法学会で泉屋が話題提供を行った「心理療法に生かすSCT」の内容を、コラム向けに直したものを数回に分けて連載いたします。

 カウンセリングのような個人へ援助する際にどのようにSCTの体験が役立つのかについて、興味がある方はぜひご覧ください。



1.協力関係の大切さ


 私がSCTのセミナーに通い始めたのは、病院で働き始めて3年目のころでした。

当時、カウンセリングのケースをすでに受け持っていましたが、なんだか苦戦していました。SVを受けておらず、困ったときに上司へ相談していただけでした。


 当時の状況を今思い出してみると、クライエントが困っている状況について話して「私はどうしたらいいんでしょう…」と言っているとき、私は<専門家として何か答えなければ><頼りにならなきゃ><わからないなんて言えない><でもわからない><どうしたらいいんだろう>という考えでいっぱいでした。

 それを患者さんに言うわけにもいかず、ひたすら話を聞く、もしくは専門知識に基づいて突然介入し、カウンセリングが中断する、なんてことをしていました。


 何かうまくいかないんだけど、どうしたらいいのか……と途方にくれたまま、私は臨床3年目に、SCTのグループへ参加し始めました。



 SCTのグループではいろいろな体験をしてきました。今回は例を1つあげます。

 SCTのグループである人が「なんだかすごく緊張していて体が重い感じがします」「同時に…うーんわくわくしているのもあります」と話したとき、私は<あっ、似てる感じ、まず伝え返しをしなきゃ>と思います。

 伝え返しから始めるのがSCTの体験グループでの発言時の決まりなんですね。

 いざ伝え返しをはじめてみたものの、<緊張して体が重いのと…すみませんわすれてしまいました後何か…>と途中で忘れてしまい、相手に「わくわくもしています」と助けてもらえて伝え返しができました。

2人の人が体験グループで伝え返しているイメージ


 こうしてSCTのグループで伝え返しを繰り返す中で、話を聞く私だけが頑張る必要はないんだ…としみじみ思いました。

 話を聞くというのは、こうやってお互いに助け合うもの、協力関係を作るというのはこういうことなんだ…そっか……と肩の力が抜けました。

 同時にカウンセリングで私は、専門家である私が一人で頑張らなければと思っていたのか、と気づきました。


 それから私は、クライエントの話でわからないことがあれば、遠慮なく私から<もう少しどういうことか聞かせていただけますか?>と聞くようにしました。また、聞いて理解したことを<…ということですか?>と伝え返しの形で確認し、時にはクライエントにしっかり訂正してもらいました

 そう心掛けていくと、まず私自身が、一人で頑張っているころよりもクライエントの話を聞く余裕が出てきました。

 私が伝え返した際のクライエントも「そうなんです!」と力強く返してくれていて、ちゃんとクライエントの話を聞けていることが前よりわかります。


 こうやって伝え返して、協力し合ってクライエントの話をしっかり聞いていけばやっていけそうだ! と4年目の私は手ごたえを感じました。


 こうやって伝え返すことを今でも大事にして続けています。

 もっとも、伝え返しとは協力し合ってクライエントの話を聞くだけのことではない、とは当時の私は全く気付いていなかったのですが……。

 この続きは、また来月のコラムで。

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