この度、福田さんに、SCTの臨床現場での活用例(体験談)を書いていただきましたので、ご紹介いたします。
「今、ここ」の気持ちに向き合うこと、そしてそれをグループでみんなと一緒に探求するという体験は、私にたくさんの気づきと変化を与えてくれました。
2年前、初めてSCTセミナーに参加した時は、「どのタイミングで話そう」「こんなことを話したら変だと思われないだろうか」といった考えにとらわれ、緊張と不安で終了間際まで一言も話せず、悶々としたグループ体験となりました。
しかし、メンバーから自分と同じような不安や緊張を感じている、という話を聞くうちに、「自分だけじゃないんだ」という安心感が生まれ、不安よりも「つながりたい」「話してみたい」という気持ちが少しずつ大きくなり、「今、ここ」で感じていることを率直に話してみようとする機会が少しずつ増えていきました。
くり返しグループに参加する中で気づいたことは、日々の体験が、いかに自分の主観や思い込みによって作られ、しかもそれを絶対的な事実のように感じている、ということでした。自分の中の思い込みや自意識の強さ、そこからあふれ出るネガティブ感情に直面し、「私ってなんて嫌なやつなんだろう‥」と落ち込む気持ちもありましたが、それと同時に、「世界は自分が思っているほど怖くないのかもしれない」「怖いと思っているものは、自分の心がつくり出しているのかもしれない」ということを、体を通して実感できた、大きな安心感を得られる体験にもなりました。心も体もふわっと軽く、あたたかくなるような、やわらかい感覚になったのを、今でも覚えています。
「ああかもしれない」「こうかもしれない」と内向きの考えばかりに目が向くと、現実から離れた妄想ワールドが、あっという間にむくむくと育ちます。でも、そのことに気づけるだけでも、ラクになれることを体験できました。こういった知識は認知行動療法などで持ってはいましたが、知識があるのと体験したのとでは、納得感も安心感もけた違いだというのが率直な感想です。
SCTでの体験は、臨床の場でもとても役に立っていると感じます。私は精神科クリニックのリワークで働いていますが、特に大きいと感じているのは、「相手の話を一生懸命に聴いて伝え返し、足りなければ助けてもらう」ということから得た気づきです。SCTを通して、それまでの私は、「支援者の自分が何とかしなければ」と無意識に気負っていたということに気づかされました。それは、目の前の患者さんの力を信じきれていないということでもあると思います。何ておこがましい考えだろう‥と、気づいた時にはショックも感じた一方で、一筋の光が差し込むような、そんな感覚がありました。
「メンバーに助けてもらいながら、一緒に取り組んでいけばいいんだ」
そう思えるようになってからは、私自身が以前よりも安心してグループにいられるようになりました。そうすると、その安心感がグループにも伝わって、メンバーが話したいことを話し、その人のハートも見えやすくなってくる‥そんな良い循環になっていったように感じます。
そうは言っても、日々の業務に追われて、気づいたらまた気負いモードになっていたり、誰かの一言にネガティブな感情が湧いたりすることもありますが、そんな時はふと立ち止まって「自分は今、どんな気持ち?」と聞いてみます。
いろいろな役割や利害関係を越えて、「自分は今どう感じているのか?」を自分にやさしく問う時間と場は、とても貴重だと感じます。これからも、SCTセミナーで自分と向き合う時間を大切にしながら、そこでの体験を日々の臨床につなげていきたいと思っています。
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