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執筆者の写真世話人

連載:心理療法に活かすSCT 第2回

 先日集団精神療法学会で泉屋が話題提供を行った「心理療法に生かすSCT」の内容を、コラム向けに直したものを数回に分けて連載いたします。

 今回は2回目です。(1回目はこちら

 カウンセリングのような個人へ援助する際にどのようにSCTの体験が役立つのかについて、興味がある方はぜひご覧ください。



2.自分の気持ちを持っておくこと


 前回、SCTのグループで伝え返し、相手が話したことの大事なハートを自分が改めて伝える際のことを上げました。協力し合って伝え返しをすると、相手の話をしっかり聞くことができます。

 でも実は、協力する以外で伝え返すときにやっていることがあるんです。


 前回の例をもう一度上げましょう。

 SCTのグループである人が「なんだかすごく緊張していて体が重い感じがします」「同時に…うーんわくわくしているのもあります」と話したとき、私は<あっ、似てる感じ、まず伝え返しをしなきゃ>と思いました。

 ここから協力して相手の気持ちを十分わかるまで、伝え返しをします。


 この時、私は伝え返しをしている間、自分の<似てる感じ>を出さないで、持ったままにしていました。SCTのグループでは十分伝え返しが済むまではまず相手の気持ちを丁寧に聞き、それから自分に戻って、自分の気持ちを話す必要があります。



 これが伝え返しでやっていることの2つ目。自分の気持ちを持っておくことです。


 SCTのグループに通い続けながら、カウンセリングをしていて、私はある時気が付きました。以前よりも思い浮かんだことをすぐに言わずに、待てるようになっている、と。


 例えばカウンセリングでクライエントが「私ってダメなんです。全然やらなきゃいけないことができなくて、わがままで。もっとしっかりしないといけないのに」なんて話したとき、私はつい<それはわがままではないのでは?>なんて、思ったことを言いたくなってしまいます。話を聞いていて、どれほどクライエントががんばっているかを知っていると、なおのこと何か言いたくなる。


 SCTのグループに通う前は、自分の考えをうっかり言ってしまって、なんか違ったなと反省、言わないようにして話をひたすら聞くけれど、今度はひたすらクライエントの話を聞くばかり。これはこれで何か違うのでは…と不安が膨らんでいました。


 それが、SCTのグループに通い続ける中で、クライエントの気持ちをしっかり聞きながら、頭の隅で自分の考えを取り扱う…ということが出来るようになりました。

 クライエントが「私ってダメなんです。全然やらなきゃいけないことができなくて、わがままで。もっとしっかりしないといけないのに」と言ったら、<しっかりしなきゃと思うのにできないんですねぇ…具体的にはどんなことが?>ともう少し気持ちをわかろうと伝え返しをしながら、頭の隅で<それはわがままではないのでは?>という私の考えを言わないまま持っておく。

 しばらく話を聞く中で「周りは頑張りすぎっていうけど、私は自分がわがままだって思うんですよね」なんて話が出て<ご自分としては、そう思うんですねぇ><周りに頑張りすぎって言われるとどう?>「でももっと頑張らないとって思う」みたいに、やり取りができることもあります。


 十分クライエントの気持ちを聞いてみると、自分のことをわがままと思うクライエントの気持ちが、前よりわかるような気がしてきます。確かに、もっとがんばらないとと思うことは私もあるな、と。


 他にも、クライエントに専門知識を説明するといいかも、と思ったときに、焦らず様子を見ることができるようになりました。それは、私がこうしたほうがいいかも、という自分の考えを持ったままで相手の話を聞く、ということに慣れたからでしょう。

 今でも、私はどうしても言いたくなる自分の気持ちに気づきながら、クライエントの気持ちをまず聞こうと心掛けています。できないときもあるのでこれからも頑張らないと……。



 さて、伝え返しをする側としてやっていることはここまでとして、来月のコラムでは自分の気持ちを話すときのことを取り上げてみようと思います。

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