先日集団精神療法学会で泉屋が話題提供を行った「心理療法に生かすSCT」の内容を、コラム向けに直したものを数回に分けて連載いたします。
カウンセリングのような個人へ援助する際にどのようにSCTの体験が役立つのかについて、興味がある方はぜひご覧ください。
4.ハートを一緒に取り扱うこと
さて、今度は他の方から自分の体験を伝え返されるときの話をします。
<私も緊張…? に近いから繋がれるかなと思ったんですが><私の場合だと話せるかなと思ってとてもドキドキしている感じです>といった私の発言を、他の方が「ちゃんと話せるか心配なんですね」と伝え返したとき。
私はだいたいそうだけど細かなとこで何か違う、と感じ、どう違うんだろうと自分でも探りながら、<うーん、伝わるように話せるかなってドキドキします>ともう一度伝えます。
「伝わるように話せるかドキドキしている」と相手がハート…自分の発言の核を返してくれたとき、そう! わかってもらえた! という感じになりました。
相手から伝え返されるとき、私はハートが捉えられていないときは違和感があり、ハートを返されたときはフィット感があると体験しています。
このフィット感があるとき、すごくうれしいんですよね。一緒にやれた! わかってもらえた! という感じがあります。
実は伝え返されたときに、私自身が自分の発言のハートをいつもしっかりわかっているわけではないんです。そういうときは助けてもらってハートをつかめた体験になります。

このやり取りを通して、ハートを一緒に共有できることがとても嬉しく、安心することという体験ができるのがSCTのグループの醍醐味だなぁと思っています。
第1回目のコラムですでに一緒に協力して話を聞くことについて書きました。
どんな協力の形でもよいわけではなく、安心して協力できる、心を話せる…カウンセリングでよく言われるラポールを築くためには、ハートをしっかりやり取りすることが必要なのだと思います。
SCTのグループを通して私は、ハートをやり取りすることについて前よりつかめるようになりました。
例えばカウンセリングで、今の状況の大変さをたくさん話した後にクライエントが「私はどうしたらいいんでしょう…」とこぼしたとき。私は自分自身のわかる! に気づいていて<本当に大変な中でやってきて、そりゃーどうしたらいいんだとはなるよなぁ>と感じています。これを言葉にして<本当に、どうしたらいいんだ…ってなりますよねぇ…>と伝え返して、クライエントがうなずく。
こういったときに私はクライエントのハートを頭ではなく、自分のハートのようなもの……今の核心の感じで捉えています。
SCTのグループで自分の気持ちを言おうとするときのハートとは少し違う気もしますが、セラピストの私にも今の核心の感じがあって、クライエントの話を頭ではなく、わかる! という感覚があります。
この感覚を含めて伝え返したときに、お互いに伝わったと感じているとクライエントの反応でわかり、新たな話が展開していくことが多いと思っています。
このセラピストの私に生じる、今の核心の感じ。
私の体験で言えば、そもそも自分のハートが前よりつかめるようになってから、捉えられるようになったと思っています。なのでハートに近いものなのかも? という、これはかなりふんわりとした仮説ですね。
そして私はSCTのグループで自分のハートについて他の人とやり取りする中で、より自分のハートをつかめるようになったとも感じています。ハートをつかむのは自分だけでは難しく、人とやり取りすることが効果的なんだと思います。
余談ですが、自分のハートをつかめるようになって、私は疲れた時の気晴らしが前よりうまくなりました。今の自分のハートにそって動けると癒されるので…。
ハートをつかむことにはそんな効果もあるんじゃないかなぁと勝手に思っています。
さて「心理療法に生かすSCT」の内容は今回で終了です。
あくまで私の体験をベースにした内容なので、もっとこういう効果もあるよ! ということがあれば、ぜひメールフォームから気軽にお送りください。
コラム欄ではみなさまの体験を募集しています!
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